2020年度・卒業生を送る会 | 奈良尚武館道場

2020年度・卒業生を送る会

2021/03/20

高校へ進学の西口和希くん、赤崎千洋ちゃん、中学へ進学の竹中緋菜ちゃん、岡部政人くん、徳田雄翔くん、卒業、そして進学おめでとう。

日本が近代国家になって以降、未曾有の出来事がたくさんありました。その中でも特に歴史に残る災害として東日本大震災と今の新型コロナがあり、その両方を君たちは経験したわけです。東日本大震災については10年も前のことでありあまり記憶にないかもしれません。関西に住んでいる我々にとっては直接的な被害はほとんどありませんでしたが、君たちの知らないところでの「経済」への影響という意味では、君たちのご両親のお仕事などにも影響が少なからずでていたでしょう。しかし今現在、収束の糸口さえ見えない新型コロナについては、とても大きな実感を感じていると思います。日本に感染が広がってきてからすでに1年が経過したということもあり、ほかの競技スポーツは観客の制限などいくばくかの制限があろうとも、小学生からプロ選手まで、マスクもせずに試合が行われています。中には国際大会も開催されているものもあります。ところが剣道はどうでしょう。未だにマスクをして稽古しているのは剣道だけであり、小中学生の民間主催試合が未だに開催されていないのも剣道くらいのものかも知れません。君たちの中には、試合をしていたら確実に県内くらいは優勝していたであろう実力者がいるだけに、1年間試合が全くなかったことは本当につらかったでしょう。それでも、そんな環境でも、そんなつらい思いをしていても、君たちは卒業まで道場で剣道を続けました。しかも決して楽ではない、厳しい稽古をやり続けたのです。

もし誰かに、「どうしてそんな厳しい稽古をやり続けているの?」と聞かれたら返答に困ることでしょう。「稽古が再開されたときのために備えなさい」と私は言い続けましたが、未だに大会が開催されていません。「剣の理法の修練による人間形成のためにやっている」なんて、君たちには納得できない説明でしょう。それでも君たちはやり遂げたのです。ここに、ほかの競技では経験できなかった忍耐力や「夢をあきらめない」という精神力が培われたと思うのです。だから・・・だから君たちは本当に偉い!本当によくやったと思います。

西口和希くんは幼稚園の時から優勝していました。ずっとずっと我らにとってスーパースターの道を歩いてきましたのでトロフィーはいったいいくつもっているのでしょうね。6年生の時には逆転ウルトラCのような小手で決勝戦の大将戦をひっくり返して優勝したり、小さな体なのに都道府県などの代表になって入賞したりとすばらしい活躍をみせました。でも私はずっと心配していました。このまま大きくならなかったらどうしよう?と。そこで競馬の騎手になる試験の日程まで調べて人生設計をアドバイスしようと思ったくらいです。しかしここにきて人並みの身長になってくれてほっとしています。今後はまずは大阪の優勝を狙い、ちょんのように全国レベルで活躍してくれることを期待しています。

赤崎千洋ちゃんは中学生になってからの入会だったことや、私の長期入院によりあまりともに戦う機会がもてませんでした。でも、入ってきてくれた時は人数があまりそろわなかった時期であったこともあり、能力が高くて熱心な子が入ってきてくれたなぁと喜んだことを覚えています。現・尚武館館長の加奈子先生の中学で学んだ3年間はまさに尚武館剣道を体得したことになります。ちーちゃんと仲良しお母さんの熱心さもいつも伝わってきました。これからもお母さんと一緒にすばらしい高校生活を作り上げてください。

竹中緋菜ちゃんは全然顔に気持ちを出しません。でもわかっています。これほどの実力であれば、試合を重ねていたら相当なスターになって優勝しまくっていたことを。だから去年いきなり試合がなくなり、すべての全国大会の予選すら開催されなかったこの1年間は誰よりも、誰よりも悔しかったろうと思います。でも顔には出しません。しっかりと尚武館のキャプテンとしての務めを果たし、人間的にも立派に成長したと思います。中学の大会が開かれたら1年生からいきなり大型新人として注目されることでしょう。全国にはばたくにはデビューから活躍しておく必要があります。ひなちゃんはバズーカ砲のような面をもっているだけに、これからの活躍に期待しています。

岡部政人くんは6年生になってから週3回の稽古生になりました。尚武館では基本的に週3回の稽古を重ねていないと一切の試合には出さないというルールがあります。それは、週に3回の稽古では足りない人が日曜日などの練成会や試合に行くのだという考え方からです。でも5年生の時にスポーツ少年団の予選で人数が不足し、試合に出場しましたね。そして週3回となり、これからというときにコロナがやってきたわけです。そういう意味では意気込みがそがれたような感もあったでしょう。それでも小学校最後まで頑張りました。後から週3回になっただけに尚武館杯でもなかなか結果は出ていないものの、確実に良くなっていることは確かです。勉強もめちゃくちゃできると聞いています。前途は開けているだけに文武両道で頑張ってほしいと期待しています。

徳田雄翔くんは週3回ではないので試合や練成会に行くことはありませんでした。だからほかのメンバーと同じメニューをこなすのは大変だったと思います。それでも最後までやり遂げたことは今後の中学生活にも活きてくると思います。昇級審査も見事にクリアしましたね。大きな声を出すのが苦手だったけれども、今ではしっかりと出すことができるようになりました。尚武館の小学生の中では突出して背が高いだけに、小さくてすばしっこい仲間との稽古は大変であったと思います。本当によく頑張りました。これから素晴らしいい中学生活を創り上げてください。

いつも言っていることですが、最後にいくつか繰り返し伝えたいことがあります。

①どうせ剣道を続けなら、ジャパンの稽古をしよう!(意味はわかるよね?)

②優勝する人には優勝する理由があります。稽古に取り組む姿勢が違うのです。

③剣道も勉強も積み重ねです。ひとつできるようになったらそれを忘れずにふたつめを身につけよう。

④本当に良い結果を出す人は、お母さんの用事をお手伝いする人ではありません。それを自分の仕事だと思って自らやる人です。

⑤感謝の心は何倍にもして自分に返ってきます。本当だよ!

新型コロナで君たちは過去に例のない経験をしました。今後の見通しの無い中でも、継続して上を目指した人が思い通りの人生を描けます。それを信じて頑張ってください。

ケガをしていて稽古もつけられないのに、そして、荒っぽくて、口が悪くて、とてもこわくて、圧が強くて、キッツイ稽古をさせる私なのにしっかりついてきてくれて、本当にありがとう。

奈良尚武館 前・館長 天野秀治

小中学生の卒業生

卒業

西口和希、赤崎千洋竹中緋菜、岡部政人、徳田雄翔